コロナ禍での経済学その1


日ごろのご愛顧ありがとうございます。店主の高野です。5月も終盤に入り夏らしさも大分感じられるようになってきましたが、今年になってコロナの話題から始まり、それにずっと振り回されたら、この5ヶ月間は結構長く感じてます。歳をとれば時の流れは早くなっていく一方なのかと思っていたら、こういうなかなかない経験をすると桜が咲いてた季節がずいぶん昔に感じています。

うちの店でいうと、感染者の少ない仙台よりも、日本中から警戒された東京の方が売り上げは良く、しかも夜10時までの営業が許されたことから、これで会社を潰さずに済みそうだと大分安心感が出てきました。もちろん、まだ支給されてない助成金や協力金が入って来ることを前提としてるので、売り上げ水準的にはまだまだですし、資金繰り的にも資金が底をつく前に早く入ってきてもらいたいというのは変わりません。

先日、雇用調整助成金が15,000円に引き上げられるようなニュースがありましたが、それはそれでありがたいのですが、これは逆にモラルハザードを招き仕事をしなくなる人が増えるぞと思ってたら、今回うちの労働者代表になり私の労使交渉の相手となった伊藤健太も、僕もそう思いました、と言ったのを聞いて頼もしく思いました。

雇用調整助成金は四月に上限8330円で休業手当の9割まで助成してくれるとなりましたが、それが5月は10割まで助成してくれることになり、そもそも8330円じゃ足りないからということで、15,000円まで上げるという話が出てきたのでしょう。

この15,000円に労働日数をかければ想像できますが、この水準になると飲食業の従業員の大半の給料を満額満たすことができます。事業主としては従業員を休ませればリスクフリーで人件費が貰えて、ほかの協力金や給付金を合わせれば、店開けてるより閉めてる方が儲かっちゃう店も出て来るでしょう。

東京都という感染者を減らせば減らせるほど評価されるところは、飲食店は閉まってる方がありがたいのでしょうけど、日本経済に責任を持つ国としては、そのようなルールを出して来るのは国会議員の人気集めにはなるでしょうが、経済、財政的にはよろしくないので多分やらないでしょう。

この話を、伊藤健太が聞いて私と同様に感じたというのは、助成金申請に当たって今回の助成金の仕組みを分かり、どこまで従業員を休ませた方が、従業員、会社ともにダメージを最小限にできるかをイメージでき、これが15000円になった時に会社への影響、そしてこれが社会全体になった時の人々のとる行動が想像できるということで、ついこないだまで売り上げの責任は持ちたくないので、人の管理はめんどくさいから関わりたくないので、更に年金なんて信用してないのでと言って社会保険にも入らず、自由人人生を送っていた人間が、ちょっとしたことで脆い信念を崩してうちの社員になり、恵比寿店の店長になり、うちの労働者代表になり、一気に社会人としてのレベルを上げたような感触です。

同様のことは、先日、仙台でもあり、普段1人でやっているところ予約が2件入ってきたので、1人でやってたら客に迷惑かけるかもと思い、近所の学生バイト佐藤壮真に、お前手伝うか?と聞いたら、二つ返事でやりますと返ってきて、最初は1ヶ月ぶりのバイトだからウォームアップ感覚で料理運ばせて、皿洗わせておけばいいかなぐらいに思ってたのですが、店に入って来るなり、私が既に済ませておいた掃除をやろうとほうきを持ち出してきて気合満々で、率先してドリンクを作り、私がやろうと思っていた揚げ物まで自分の判断でやり、しかもクオリティを心配して覗きに行っても、1ヶ月の咀嚼期間のせいか天ぷらも上手くなっており、私以上に動いて働いたのではないでしょうか。以前は段取りの悪さが目立つやつでしたが、いつになったら覚えてくれるんだ?と聞くと、あともう少し時間をください、と必ずできるようになると確信めいたことを言ってましたが、確かに1ヶ月ぶりの仕事を見た時に頼もしさは、二回り三回りくらい大きくなっていました。

このコロナの営業自粛期間、今もですが失ったものは、金から時間から大きかったですが、得たものというか、気づいたものは、それに変えられないものなのかもしれません。本当にこのコロナで従業員の意識が変わったのかもしれないし、ただ顕在化しただけなのかもしれませんが、こういうことを感じることは気分が良いものです。


頭の写真は、脆い信念を弓子に説く伊藤健太

尻の写真は女たちを従え弾き語る佐藤壮真