あじなめろう

日頃のご愛顧ありがとうございます。店主の高野です。早くも今年も残すところ1週間となり、また新しい年がやってこようとしています。きっと新しい年もあっという間に終わることでしょう。

本日は食べ物の話をしたいと思いますが、私どものメニューでオープン来続いているメニューで「アジのなめろう」という商品がありますが、おかげさまで評判も良く、うちのメニューの中でも注文頻度の高い商品であります。

もちろん中には、叩いた魚がダメ、ネギが嫌いだからダメ、などと苦手の人もいますが、日本酒のアテとして、アジという味が濃く、薬味がたっぷりの味噌をつつく、という酒飲みにはとても好評なのは容易に想像ができます。

もともとは千葉の漁師料理だと聞きますが、想像するに、獲れた魚の中に売り物にならないような小さいアジとかを、内臓を取ったら骨ごと味噌と一緒にミンチにしてしまってご飯のおかずにしてたりしてたのではないでしょうか。

しかし、私のなめろうという料理の原形となるのは、海のない山形の親戚の家に出てきた、イカと香味野菜と味噌を一緒に叩いたものでした。子供ながらにとても美味しいと感じ、時たま自分の家でも母親が作ってくれたことを覚えております。

 私が魚と日本酒の店を開くにあたって、メニューを考えている時にこの料理が思い浮かんだのは、私にとっては当たり前のことでした。店のメニューには、子供の頃に食べたイカバージョンではなくアジバージョンとなりましたが、実は恵比寿の店を出した時にはアジと並列してイカもあったのです。しかもアジの方はなめろうと書かれていたにもかかわらず、イカの方は「いかのたたき」とお袋が呼んでいた料理名で書かれていました。しかし、お客さんには、なんでアジは「なめろう」なのにイカは「たたき」なんだよ?と聞かれたことはありませんでした。

さらになめろうの厄介なところは、私はメニューを書く時に「あじなめろう」と、あえてアジとナメロウの間に「の」を入れずに買いているのですが、それを私の手書き文字で見て「あいなめろう」と読む人がいて、アイナメの料理と勘違いする人がいます。

加えて厄介なのが、通常、私どものオペレーションの中で手書きの伝票の中で、あじなめろうの事は「なめ」と略して書くのですが、先日、アルバイトがそれを丁寧にも「あじなめ」なんて書くものですから、それをぱっと見した人はアイナメの一夜干しのことと勘違いしてアイナメを焼いてしまい、結局一匹、賄い行きになったことなどもありました。

このように我々の商売の中でも存在感のあるメニューですが、常連のお客さんには、これは誰が作ったなめろうだとわかる人などもいて、シンプルな料理の中にも個人差が現れる料理でもあります。

よく、自分の作るなめろうと味が違うが、味噌が違うのか?とか言われますが、それもあるでしょうが、一番はアジの素材(スーパーと市場で買うアジは値段持ちがければクオリティも違う)と薬味の量の違いなのではないでしょうか。 

作り方についても従業員それぞれこだわりに違いはあるでしょうが、私が意識しているのは、まな板の上に素材を並べてアジの量と薬味の量は同量、薬味は最初にできるだけ細かく刻む、包丁で叩くときは素材の細胞を潰すのではなく刻む感じで叩くことを意識しており、食べた時にアジ味噌の中に、噛んで香る、「あ、生姜だ」、鼻に抜けるシソの香りが表現出来ればいいなと、それだけに水っぽくさせず、つまり作り置きはできない、作りたてがベストの状態の料理であるとも考えています。

皆さんのご自分で作られる時の参考にしてください。この料理の難点は包丁でまな板を叩きまくるために、包丁の刃をすぐにつぶします。だからというわけではないのですが、私は刻むという感覚で叩くため、包丁の先端を使ってたたきます。

これだけなめろうについて語ると、とても奥深い料理に感じますが、それでもやはり単なる味噌と一緒に叩いただけの料理ではありますが、やはり日本酒とはとても相性の良い料理だと思います。